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「アフリカの月」  ~二十世紀の名曲 その2~

「アフリカの月」  ~二十世紀の名曲 その2~   _d0096218_15314468.jpg遠い港町流れる 夕暮れの口笛
海の匂いに恋した
あれは遠い日の少年

酒場じゃ海で片足 なくした老いぼれ
安酒に酔って 唄う遠い思い出

俺が旅した若い頃は よく聞け 若いの
酒と女とロマン求めて
七つの海を旅したものさ

作詞:KURO 「アフリカの月」より



この曲を初めて聴いたのは’76年に発売された、大塚まさじさんのソロアルバムだった。その次の年に作曲者の西岡恭蔵さんの「南米旅行」というアルバムがでて、その中に恭蔵さん自身が唄うこの曲が収録されている。大塚さんのファンには大変申し訳ないが、圧倒的に恭蔵さんのテイクの方に惹かれた。西岡恭蔵さんは最初、大塚さん達と「ザ・ディラン」というバンドを組んでいた。その後西岡さんはソロになり、後の二人は「ザ・ディランセカンド」として活動する事になる。その辺の経緯は良く判らない。で、西岡恭蔵という人は、この曲以前にも良い曲を沢山書いてはいたのだが、語られるのは「ザ・ディラン」での恭蔵さんばかりで、楽曲も西岡さん以外の所で一人歩きをしている。。という印象が強かった。私の中では西岡恭蔵は、十羽ひとからげに語られる関西フォークと呼ばれるシンガーとは一線を画していると感じていたし、今もそれは変わらない。
あえて言うなら恭蔵さんはブルーズだった。実生活では決して孤高の人ではなかったのだろうが、彼は地に足をつけながらもいつも遠い遥かな地に浪漫を求めている様な気がした。特にアルバム「ろっかまいべいびぃ」以降は、彼が夢見ていた遥かな地へ足を踏み入れ、大きなスケールでその匂いや風景を歌い、そこへ入り込んだが為に彼のブルーズは一層深くなって行った様だった。

「アフリカの月」  ~二十世紀の名曲 その2~   _d0096218_15335385.jpg「アフリカの月」は’77年9月に京都「磔磔」で録音されたライブ盤にも入っている。ここではギター1本での弾き語りになっているが、このギターと恭蔵さんの声がベストマッチ。恭蔵さんのちょこっと、一見投げ遣りなヴォーカルが一層ブルージィー。
この歌を聴くと、まだ見果てぬ南国のいなたい港町が目の前にパァッと広がる。西岡恭蔵に惹かれるのは、何を歌っても湧き上がってくる情景があるからなのだと思う。そしてその中で様々な事を感じながら旅する自分がいる。

西岡恭蔵には思い入れが強すぎて上手く喋れない。同じ様な気持ちを持っている人と「良いね」と言い合って終わっちゃう。この「KYOZO NISHIOKA&KARIBU NO ARASHI」は近年、完全録音盤の2枚組として発売された。バックをつとめた「カリブの嵐」は恭蔵さんのライブの為だけに集まったユニットだと思うが、このバックの演奏にのって歌うロックな恭蔵さんも聴ける。
西岡恭蔵の名を知らなくても彼の曲を聴いた事がある人は沢山いると思う。矢沢永吉氏への楽曲提供でもお馴染みの彼だが、矢沢氏の曲ではとりわけ「トラベリン・バス」が好きだ。

自分の人生の中で失敗はありすぎるくらいに沢山ある。その中でも西岡恭蔵のライブを一度も見た事がない。。というのは、かなり大きな失敗だと思っている。「いつか。。」なんて決して来ないんだという事は年齢が行くにしたがって学んできた事だが、もう少し早く理解していたら。。と悔やんでも悔やみきれない。芦別のフォークの殿堂「貘」のマスターから頂いたある音源に入っている「グローリーハレルヤ」や「I wish」は悲しすぎて今も人前では聴けないが、勿論私の宝物である。
深いブルーズを抱えて旅立ってしまった恭蔵さん、今はKUROさんと向こうで楽しく暮らしているだろうか?二人で作ったこの曲を今も歌っているだろうか?恭蔵さん、貴方の事はきっと忘れない。
by kojipiano | 2006-08-03 11:14 | 音楽


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